とりで法律事務所(東京港区北青山 外苑前駅)・ブログ

事例紹介・公示送達を経て財産開示手続に出頭しなかった者につき、刑事告発が受理された事案

2025年10月12日 18:25

1 事例

Aさんは、運送業者であるB社と業務委託契約を締結するも、B社による業務委託料の未払いが数か月発生したので、当事務所に相談、当職が受任して、B社に対して、未払の業務委託料を求めて民事訴訟を提起した。

民事訴訟では請求認容判決を得て、B社への強制執行を申し立てたが、いずれも奏功しなかった。


そこで、債務者B社に対する財産開示手続を申立て、財産開示期日が開かれるも、B社代表者C(開示義務者)は、事前に財産目録を提出せず、そして財産開示期日に出頭しなかったので、手続が終了した。


なお、財産開示手続決定正本や期日呼出状の送達は、公示送達によるものであった。

なお、公示送達は、裁判所の掲示板にて告知を一定期間掲示することで、法的に 送達が完了したものであるため、債務者(開示義務者)は、現実には呼出状を見ておらず、財産開示期日の存在を認識していないことが少なくありません。


裁判所から呼び出しを受けた開示義務者は、正当な理由なく、出頭等をしなかった場合、刑事罰の対象になります(民事執行法213条1項柱書及び5号)。

2 対応

財産開示期日後、Cの期日不出頭について刑事責任を追求すべく、刑事告発の準備を行った。そして、警察に何度も足を運んで、証拠を提供して事情を丁寧に説明し、公示送達の場合であることについても、文献等資料を提供して、この場合も刑事罰の対象になり得ることを説明した。


そして、提供した証拠をもとに、Cが、現実には期日前には財産開示期日の存在を認識し、故意により、正当な理由なく期日に出頭しなかったことを指摘する等、粘り強く説明を続けた。


その結果、公示送達の場合であっても、財産開示期日での不出頭の罪について、刑事告発が受理された。

(なお、当該事例の結果としては、不起訴処分となった。)

3 検討

呼出状の送付が公示送達によりなされた場合であっても、刑事告発が受理される可能性があることが確認された。

本件では、開示義務者が財産開示期日に出頭し、財産状況について陳述(説明)するよう、その前提として財産開示期日の存在の認識を持つよう、事前に複数の方法によって開示義務者(債務者であるB社の代表者C)に連絡通知を試みていた事案だった。