とりで法律事務所(東京港区北青山 外苑前駅)・ブログ

解決事例・転職前の会社から競業避止義務違反の指摘を受けた事例

2025年10月13日 19:10

1 ご依頼の経緯

Aさんは、B社の従業員として働いていましたが、B社を退職後、B社と取引のあったC社に転職しました。退職前、Aさんは、B社には転職先のことは特に告げてはいませんでした。

B社の退職時に、上司から退職するためには誓約書を書くことになっていると言われ、そのまま誓約書を書いて提出しました。


転職から一定期間が過ぎたある日、Aさんのもとに、B社から通知書が内容証明郵便で届きました。
通知書には、B社は、AさんがC社に転職したことを最近知ったとのことで、誓約書で定めた、B社の取引先への転職等を禁止した競業避止条項に違反しており、法的措置をも示唆するような警告が書かれていました。


突然B社から内容証明郵便が届き驚いたAさんは、どのように対応すればよいか分からずとても困ってしまったため、当事務所に相談に来られました。

2 当事務所の対応

法律相談で通知書の記載と誓約書の条項などを確認し、確かに、Aさんの転職は、誓約書で定めた競業避止条項に形式的にはあてはまるようでした(ただし、誓約書の文言の甘さから該当性自体についても反論できなくもないところでした)。


もっとも、当該競業避止条項については、制約の範囲が広範だったため、その効力を争う余地があると思われたこと、また、今後損害賠償請求を受けた場合に、仮に競業避止条項自体が有効であると判断されたとしても、損害及び因果関係については否定される可能性が高く、また、一部認められてもかなり少額にとどまることが予想されました。


ただ、相談の時点では、穏便に解決できるのが双方にとって有益だと考えられたため、あえて全面的には争おうとはせずに、上記見通しを念頭に置きつつB社の懸念を払拭することが解決にとって重要だと考えて方針を検討しました。

そして、まずは、角が立たないよう、弁護士からではなく、Aさん本人がB社の通知書に返答することにしました(文案は当職が検討・作成)。


回答の際には、競業避止条項の効力について疑義があることを軽く示唆しつつ、事実として、事前相談なくC社に転職した事実については、誠実に認めて謝罪し穏便に解決したいこと、転職後にB社が懸念しているようなこと(業務の妨害や顧客の奪取)は行っておらず、当然今後も行わないことを言及した書面を送付してもらいました。

その結果、B社に一定の理解をいただき、上記が守られる限りで請求等は行わない旨B社から連絡を受けて解決に至りました。

3 解決

競業避止義務違反による法的措置の不安 → 請求等の取りやめ


競業避止義務違反の問題は、形式的には当該条項に該当するかどうかのみならず、当該条項の有効性の問題もあるほか、契約違反による損害(額)や因果関係との関係の問題もあり、結局のところ、法的な観点を踏まえて請求等の見通しを立てることが、方針決定やひいては解決にとって重要です。

また、事業者にとっては、当該規定が機能するために、過度な制約にならないよう、また、抜け穴がないよう、適切かつ正確に内容を定め運用することが重要です。


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