裁判所から訴状が届いた(訴えられた)場合の初動対応
2024年03月11日 13:53
相手方とトラブルになって、交渉しても解決に至らなかった場合、相手方から訴えられる(民事訴訟の提起)ことがあります。訴えられた場合、どのように対処していくべきなのか見ていきます。
1 裁判所からの訴状の送達を受けた場合
民事訴訟の提起は、原告となる者が裁判所に訴状等の必要書類を提出し、裁判所が受理・審査をして、裁判所から被告に訴状(副本)等の一式を特別送達という方法により郵送します。
訴状の提出から被告のもとに訴状が届くまで、通常およそ1~3週間程度かかります。
そして、裁判所からの封筒には、基本的に、
訴状
証拠説明書
証拠のコピー(それぞれ「甲第〇号証」とナンバリングがされています)
口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状(以下、単に「呼出状」といいます。)
が封入されています。
裁判所から訴状を受け取った時点で、弁護士に相談してアドバイスをもらうのが良いでしょう。
2 まずは呼出状を確認
呼出状には、
事件番号
事件の担当部(連絡先など)
初回の裁判の日である第一回口頭弁論期日(裁判手続が行われる日のことを「期日」と呼びます。) の日時・場所
答弁書の提出期限
などが記載されています。
第一回期日は、被告が訴状を受け取ってからおよそ1カ月~1カ月半くらいに指定されていることが多いです。
この裁判所からの連絡を無視せず、答弁書の提出期限や期日に間に合うよう対応していくことが重要です。
3 答弁書作成に向けて
答弁書は、第一に期限までに作成・提出することが最重要です(理由は後述。)。
答弁書を作成するためには、受け取った訴状や証拠の内容を検討したり、こちら側でも別途事実確認・証拠収集(社内調査など)したりすることになります。
そのため、期日まで1カ月程度といっても、しっかりとした答弁書を作成・提出することは容易ではありません。
(そのため、答弁書では後述の「追って主張する」と記載して、2回目の期日で改めて詳細を主張することも可能です)
なお、弁護士に依頼する場合であっても、相談・依頼から答弁書の提出までに、弁護士との相談・打ち合わせが少なくとも1~2回、打ち合わせ間にも電話・メール等によるヒアリングなどが必要になることが多いです。
そのため、できる限り余裕をもって早めに対応することが重要です。
4 訴状の内容を確認
答弁書の作成にあたっては、原告がどのような法的根拠で、どのような事実関係及びそれを裏付ける証拠をもとに請求しているのか、訴状や証拠の内容を確認する必要があります。
訴状には、冒頭部分に事件名・原告・被告等が表示されています。そして、請求の趣旨(原告が裁判所に対して求める判決の結論部分)と請求の原因(請求の趣旨を根拠づける具体的な主張)が記載されています。
答弁書では、これらに対する反論や自己の主張などを記載することになります。
5 答弁書の作成・提出
⑴ 作成
少なくとも、事件番号、作成日時、裁判所、当事者の氏名、送達場所といった形式面の表示や請求の趣旨に対する答弁は必要です。
もっとも、請求の趣旨に対する応答について、通常は、
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求める。
と記載することになります。
(答弁書の雛形を使う場合には所定欄にチェックを付ける)
請求の原因で記載された原告が主張する事実に対して、答弁書で、これらの事実を①認める、②認めない(否認・争う)、③知らない(不知)、ということを述べることになります。また、被告の主張(抗弁)がある場合にはそれも記載します。
※答弁書作成の時間が十分に取れない、どのように記載してよいか分からないなどの場合については、答弁書で「追って主張する」と記載して答弁書を提出し、2回目の期日で準備書面を提出し主張することも可能です。
この点につき、記載する場合の注意点としては、認否もれがないようにすることの他、原告の主張する事実に対して、①認めると記載した場合、その事実については争いがない事実として自白が成立し、証拠による証明がなくとも、原則として認めた事実が存在することが前提となることです。
原告が主張する事実が事実と異なる場合は「和解を希望される場合であっても」認めるかどうか、慎重に検討すべきです。
答弁書と併せて提出する証拠がある場合、被告側は提出証拠に「乙第〇号証」とナンバリングすることになります。
⑵ 提出
答弁書は、裁判所用(正本)、原告用(副本)、自分用(控え)の三部用意し、裁判所と原告に対してファックス・郵送・持参のいずれかの方法によってそれぞれ送付します。
第一回目の期日の日時は被告の都合を聞かないで決めた予定なので、答弁書を期日前に提出した場合であれば、「擬制陳述」(被告が、第一回期日に出席して、答弁書の内容を主張したのと同様の扱い)が成立し、第一回期日については欠席することが認められます(後日、次回期日について裁判所から日程調整の連絡が来ます。)。
一方、答弁書を提出せず、かつ、第一回期日を欠席した場合、擬制自白が成立し、基本的には、訴状に記載された原告の言い分が認められたものとみなされ、欠席のまま判決になってしまいます(訴状において原告が請求の趣旨及び請求原因を適切に記載している限り、証拠による立証がなくとも、原告の請求が認められることになります。)。
したがって、訴状が届いた場合にそれを放置することは絶対に避けなければなりません。
6 期限までに答弁書の提出が難しい場合
上記で述べた通り、答弁書提出期限ないし第一回期日の当日までに十分に事実確認ができず、答弁書の作成が困難な場合、請求原因の認否について「追って認否する」などと記載して、2回目の期日に実質的な認否を行うことが実務上行われています。
したがって、遅くとも第一回期日までに答弁書を出すことが重要です(なお、答弁書提出がなくても、第一回期日に出頭して口頭で答弁することはできます。)。
答弁書の提出期限を遅れる場合には事前に、提出期限を徒過する旨を裁判所(呼出状に連絡先が書いてあります)に電話で申し出ておくようにしましょう。
7 第一回口頭弁論期日(一回目の裁判)
⑴ 事前準備
主な持ち物としては、本人確認資料(運転免許証など)、印鑑、筆記用具、手帳(次回期日の日程調整のため)、提出した証拠(原本)などです。
訴状や答弁書などの提出書面・証拠はコピーして、見やすいよう事前にファイリングおかれるとよいでしょう。
服装は自由ですが、できればフォーマルな服装の方が望ましいと言えます。
また、裁判所は建物が大きく、また、金属探知機を設置しているところもあります(東京地裁など)ので、時間には余裕を持って行くのがよいでしょう。
⑵ 期日中の活動
通常、第一回期日では、大まかに下記のやり取りがあり、早くて数分程度で終わります。
①訴状や答弁書などを訴訟上提出された扱いにするため、裁判官から原告・被告に確認があり、それぞれ(訴状or答弁書記載の通り)「陳述します」と述べます。
②証拠取調べがある場合、証拠原本の確認をします。
③裁判官が、訴状と答弁書の内容をみて不明点や気になった点を確認・質問する他、次回期日に向けて準備書面作成などの指示をします。
④次回期日の日程調整があります。
⑶期日後
そして、期日後、次回期日に向けて準備書面の作成や証拠の収集など準備を進めていくことになります。
「追って主張する」とした場合には通常、被告側が、改めて準備書面で実質的な認否反論を行うことになります。
裁判期日は通常1カ月~1カ月半ごとに進行していきます。
このように、訴状を受け取った後、第一回目の裁判期日に向けて上記の対応をしていく必要があります。
答弁書の書き方も含め、どのように対応すべきかお悩みの方は、早い段階で一度、訴状など関連書類一式を持参されて、弁護士に相談されることをお勧めします。
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